令和3年度事業活動 ~ 猛暑下での花き安定供給実証コンソーシアム

Nippon Flower Council Consortium 2020-2021 activities

令和3年度 事業趣旨

日本の最も暑い時期(猛暑期)において、日本が世界に誇る高品質な花材を産地から流通、実需まで品質を維持したまま確実に届けるための暑熱対策・貯蔵技術を確立することにより、国内・海外新市場の獲得を目指します

令和3年度 コンソーシアム組織体制

生産安定・効率化 機能

■拠点事業者

JA新いわて
伊豆大島園芸組合
インパック(株)

■連携事業者

岩手県
宮城県
福島県

需給調整 機能
実需者ニーズ調整 機能

■拠点事業者

(株)大田花き


  • 実証事業本部
  • 保管・ストックポイント管理

実運営体

■連携事業者

日本花き振興協議会
インパック(株)


  • 品質管理・確認
    実需者への輸送段階の温湿度
    データ収集・分析
  • 実証検証におけるアドバイス

令和3年度 実証試験スケジュール

オリンピック大会想定期間 令和3年7月24日~8月9日

パラリンピック大会想定期間 令和3年8月25日~9月7日

令和3年度の品質テストについては、令和2年度事業の結果を踏まえ、昨年同様暑熱期間下での実証を行った。

令和3年度 実証試験流通フロー

令和2年度実証事業により課題となったものを修正して、令和3年度の実証事業を行った。また海外への輸送実証検証については、各産地より集積地に入った花材を船便により出荷検証を実施した。

令和3年度 実証検証記録 ~オリンピック・パラリンピック想定期間

実証検証2年目では、1年目課題点を検討して、生産時点での暑熱下のタイミングに出荷量が増加、品質的にも向上がみられた。またストックポイントでの花材受渡方法など、深夜に及ぶ時間帯での受け渡しもスムーズに行った。

集積地ストックポイントまでの配送は初年度同様、専用車での配送体制をとったが、花材の仕立てについては、利用する花束の形態に合わせて、生産地で処理することで品質向上がみられた。

前年と違い制作数が大量となる事から、保冷施設での滞留日数などのコントロールに注意が必要であったが、先入れ先出し管理を徹底し、需要者に届けるまでの日数は計画通りにうんようが行えた

制作が大量となった事から、花束のそれぞれのパーツとなる素材については、別作業で運用を行いつつも、花材特性を見ながら制作の保冷施設と同様の環境で実施。一部別場所で実施パーツについては、暑熱下の影響を受けない素材のみとした。

リシアンサスは生産状況から想定した複数品種内で対応したが、若干花材特性・色合いの違いがみられた。またバラについては、特に暑熱下の開花スピードに注意が必要ながらも、生産地での切り前、輸送途中での開花ステージなどを考慮して、需要者に届ける段階でほぼ目指すステージに周知できた

専用保冷ケースについては、前年より花束に合わせてサイズの見直しなどを行った。また大量の制作数の為、制作場所とは違う場所で、翌日の配送まで保管する冷蔵リーファーでの管理を実施

需要者施設では、花束の利用時間1時間前に品質確認の上、直前で専用保冷ケースから出し、フラワークルーによる最終確認を行い、引き渡しを行った。 生産からお届けのタイミングまで、温度湿度の管理により花束としての納品時の品質劣化クレームはゼロの運用が行えたことにより、暑熱下の生産から需要者に届けるまでの管理については、本事業で組み立てた

令和3年度 実証検証記録 ~輸出

東京集積地デポとなる保冷施設でのリパックを実施、今後需要が高まると思われる船便での輸出品質維持実証では、冷蔵リーファーにて通常より低温となる2℃/湿度75%で設定し、植物を寝かせることで品質維持が行えるかを検証。


日程 2021/9/15~9/20

【輸出対象花材ごとの実績】


精の一生、精の光彩ともに着荷時から特に問題なく、2日で五分咲き、一週間でほぼ満開となり日持ちの良さは良好。一週間をすぎると徐々に下葉が枯れてきますが花自体は問題なし。


菊(Disbad)

着荷時は良好に見えましたが緑のみ2日目から花の下部から少し色褪せが始まり3日目あたり   から薄茶色に変色が多くなり、6日目には葉を含めてかなりダメージが大きくなった。対して黄色は特に問題なく7日目まで大丈夫に見えた。緑は水の濁りが進んだため、劣化が早まったものと思われる。


菊(花束)

緑のDisbadのみ花の変色劣化が進んだが、黄色、ピンクのDisbadはほぼ問題なく7日目まで維持した。


アルストロメリア

比較的状態のよかった赤、黄、ピンク、白(固いつぼみの多い束)の4色。いずれも花弁の傷みが見られたが、しぶとく咲き続けた印象。つぼみの花は徐々にほころぶ。しかし3日目あたりから花弁落ちが急増、葉の傷みも激しくなり、7日目にはダメージ大。蕾の固かった白のみ状態は維持していたが、予想より開花が進まず満開には至らず。


ユリ-ソルボンヌ

蕾のまま開花ぜず変色枯死


ユリ-カサブランカ

ほころんでいた花のみ開花はすすんだが満開に至らず、他の蕾は開花せずそのまま枯死。ユリはダリア同様着荷時から破棄してもよい状態ではあった。


アルストロメリア(花束)

水袋があるため花自体は着荷時の傷みがあるとはいえ開花状態を維持。切り花同様徐々に花弁落ちして傷みが進行。袋の水は半分以上が残った。


りんどう

着荷時の傷んだ蕾のまま開花せず、7日目までに変色劣化。


りんどう(花束)

着荷時の傷みが進行、枯死。


りんどう(Pieris)

水揚げが悪かったのか2本ほどの葉の一部に茶色変色が始まり、7日目までに拡大したが他の枝は大丈夫であった。

花持ちテスト 外気温(30~35℃キープ 湿度40-56%)

エアコンルームとは別に、外でキープした分のテストも行ったが、やはり劣化スピードが早く、菊以外は6日目までに全滅した。持ちこたえたのは精の一生、精の光彩、Disbad黄色のみ。右記写真は6日目の状態。

令和3年度 実証検証レポート

令和2年度に引き続き、猛暑下での産地から需要者への切り花及び切り花加工品の流通についての検証を行った。また国産花きの輸出拡大に向けて、コストの低減、品質の安定を検証すべく、船便コンテナでの輸出物流検証を実施した。(前項)

国内の猛暑下での流通については、需要者の必要とする各花材の仕立てを産地で加工し、その品質を維持し各産地県のストックポイントを経て、コールドチェーン物流により需要者ストックポイント、加工場への物流を実施検証をおこなった。

前年と同様に産地から需要者のストックポイントまでの物流では、温湿度ロガーにより、指定した温湿度帯での流通を監視し、また今回実証した花材では、湿式によるコールドチェーンによる物流が有効であることを実証した。

需要者近隣ストックポイント・低温加工場での加工を経て、最終需要者へのブーケ物流については、常温物流車両で耐えられる保冷ボックスの選定より“シールド”タイプを採用、畜冷材での24h保冷と共に、ブーケには保水ゼリー(高温期用)を行った結果、需要者への引き渡し時点での品質劣化は見られず、約5,000束の供給の中で1つのクレームも発生しなかった。

今回の猛暑下での国内花きの流通については、それぞれの流通時点での有効な品質対策を実証が行えたが、海外への輸出については、物流にかかる時間、温湿度の設定など、更に検証が必要と思われる結果となった。